一通り近況を報告しあってから、彼女は一緒に歩いていた東洋人の男性を私に紹介し、アーチストである彼の作品も何点かこの展覧会に出品されていることを教えてくれた。
その男性は紹介されるまま、控えめに微笑んで「はじめまして」といいました。
大柄なクリスティーヌの隣で、彼の方が小さくか細く見えました。
その夜、再会の余韻がまだ残る中、私は数年前の手帳を探し出してきて彼女の電話番号を見つけ、受話器を取った。
あの場では聞けなかったことを確認しておきたかったからだ。
「アローッ」歌うような元気な声は昔と少しも変わっていない。
先程の再会が嬉しかった旨を改めて伝、兄た上で、単刀直入に質問した。
「さっきのあの彼、前に話していた中国人のボーイフレンドと同一人物かしら・・・?」「あら、もちろん、そうよ。
同一人物、同一人物。
相変わらず一緒にいるのよ」そういって彼女はけたけたと朗らかに笑うのでした。
そのデスクトップ仮想化のことは、やはり前出のサンジェルマンのカフェで何度か聞いていました。
もう長く付き合っているけれど、結婚するつもりは今のところまったくないこと。
アヴァンギャルドな現代アートを手がける彼は、まったく家庭向きの男性ではないこと。
母の顔と女の顔をこっちゃにしたくないから、子供たちと暮らす家に彼を連れてきたことは一度もないこと。
けれどもちろん子供たちは彼のことを知っているし、彼とクリスティーヌが恋人同士であることも承知していること。
彼と会うのは夜か週末。
外か、彼のアトリエで。
そんな距離を置いた関係が心地よいこと・・・。